バブルが崩壊したら どうなるのか(小幡績)

新たに株式市場に、より貧しい人々を動員することによる「ネズミ講メカニズム」が、金融市場資本主義とバブルの本質であり、さらに、一部分の値付けが全体に及ぶ時価主義のメカニズムなのであり、この2つを発明した近代資本主義は大いにバブルを膨張させてきたのである。 時価主義は逆回転しうる。「誰も買いたくない」「皆が売りたい」ときに、誰かが思い余って、安く売ってしまうと、一気に時価総額は下がる。下がり始めれば「われ先に」と売るから、価格はとことん下がっていくのである。膨張したメカニズムは逆回転し、金融市場は縮小、銀行融資も縮小、その結果、実体経済も縮小するのである。 「リスクテイクが経済成長を生み出す」という神話も間違っている。リスクテイクが新しいものを生み出すのではない。イノベーション自体が経済を発展させるのではなく、そのイノベーションに対して、銀行家が信用創造で、現在の経済市場には含まれていなかった新しい資本を追加的に供給することによって、経済は拡大、発展するのである。リスクテイクに対して金融が付くから経済は拡大するのである。したがって、資本注入量が減少すれば、どんなに技術革新があっても、どんなに人々の生活が前よりも便利になっても、経済規模、GDPは値付けとして縮小していくのである。買うカネがなければ、経済は拡大しないのだ。 だから中世は、経済規模は拡大しないが、技術進歩は起こり続けた。値が付かなかっただけであり、王侯貴族が支出しなかっただけなのである。これからは、そういうことが起こるだろう。技術進歩が起きようとも、いかなる進歩があろうとも、金融が縮小すれば、金融市場の時価至上主義で成り立っている近代資本主義経済は縮小していくのだ。